Wasteの雑記帳

いろいろ

いち21卒就活生が就職活動を振り返る

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 そういえば就活が終わっていたので,ひとつの区切りとして自分の就活を振り返ろうと思う.ものすごく個人的な話をするので,何かの参考にしようというモチベーションではなく,「こういう奴がいたんだな」程度の手記と思ってくれた方がいい.

 望みとしては,何年か後に「そういえばあの激動の中21卒の就活生はどうしてたんだろう?」と気になった人が欲しい情報が盛り込めたら嬉しい.

 

 私が就活を意識して動き出したのは修士1年の春だったかと思う.といっても定番の就活サイトに登録する程度のものである.オファー型のサイトにも登録した.広く業界を見たい人なら得るものがあると思う.

 とんで8月.インターンに参加した.片田舎に工場を構える,名前を聞けばみんな知っている化学メーカーで,1泊2日であったがなかなか楽しかった.結局ここは本エントリーしなかったものの,専門家や職業人とのコミュニケーションが楽しいと気づいたのは収穫だった.

 9月.また別の1日インターンに参加した.渋谷にオフィスを構える広告会社だったが,正直あまり好きになれない業務内容だった.私はいきなり紫や黄色の蛍光マーカーで強調したり,本人が言ったのかどうか分からない芸能人のレビューを載せるタイプの化粧品の広告が大嫌いなのだが,ここが正にそのテの広告の産地だった.しかしどうやら数字が取れる手法らしく,営業益はオフィスの規模の割に大きい.あの広告を見て購買を決める消費者にがっかりしたし,正常な判断能力を持たない人間を相手に詐欺まがいのことはしたくないものだと思ったものである.

 とんで2月.別の1日インターンに参加した.オファー型の就活サイトを経由して声を掛けてもらったところで,業務内容は企業向けのソフトウェアの保守・運用,いわゆるITにカテゴライズされる.他の参加者ときちんと向き合ったのはこれが初めてだったかもしれない.理系・文系の両方が参加していたが,「こういう人が就活で強いんだろうなあ」という学生に出会った.都内の有名私立大の女子学生で,裏で何を考えているのかはよく分からないが愛想がよくはきはきと喋る.自分で書いておいてなんだが,就活でなくとも強みになり得るなあと思う.この企業は気に入って,本エントリーしたし2次面接まで進むことができた.しかし,面接当日に先方の面接官が体調不良とのことで延期が通知され,結局面接が行われることはなく,21卒の採用は見送りとなった.コロナウイルスの影響による業績悪化が理由である.

 

 このときまでは各会社は様子を見つつ対面で説明会やインターンシップを実施していた,という印象がある.私が行った説明会の会場ではマスクが配られたり,手指の消毒が指示されるなどの対応を行っていた.

 

 2020年2月28日.近所からマスクとトイレットペーパーが消えた.どこに行っても無いので,面白がって5店舗ぐらいを車を走らせて回った.結局,その日は1個もトイレットペーパーを手に入れることはできなかった.ウイルスの影響でトイレットペーパーが品薄になる,というのはデマだが,デマを真に受けた集団心理によってトイレットペーパーが品薄になったのは事実として目の前にあるものだから,良くないスパイラルが起きたものだと思う.令和にしてオイルショックを体験したようなものだ.教科書の写真で見た光景を,16:9の地デジ放送で見ることになろうとは…集団心理の制御不能と備蓄の重要性を学んだ.だいたいこのあたりから,就活が平年通りでなくなってくる.

 

 3月.自主的に大学を休むことにした.わが県ではまだ感染者が現れていなかったと思う.当時は自治体で感染者が見つかるたびに人を集めて会見をしていた.感染者が確認された都道府県は赤く塗られ,連日報道された.現在,感染者が確認されていないのは岩手県のみとなったので,あの塗り絵に意味があったのかどうかは果たして疑問である.大学を休んだことにより,就活に関して同期と情報交換するのが難しくなってしまった.(別にLINEなどで連絡すればよいものであるが,雑談でそういうことができるのが理想である)

 就活はオンライン中心となった.説明会や面接はZoomやSkype,Teamsといったツールを用いた非対面式となり,テレワークが推奨された影響もありWEBカメラやモニター,コストパフォーマンスの良いマイクが軒並み品切れとなった.新たに買いそろえる必要があった就活生は苦労したと思う.私は幸い,ゲームをプレイしながらボイスチャットするための機材を揃えていたので困らなくて済んだ.さながら趣味で着ていた防弾チョッキに命を救われたアバレイエローのようである.画角の都合でカメラにマイクアームに固定されたSM58が写るので,面接の開始時には先方から「すごいマイクですね」などと言われ掴みはバッチリであった.採用条件が音質だったら間違いなく内定を獲得できていたことだろう.他の就活生は型落ちノートPCの内蔵マイクやスマホで面接を受けていたのだから.

 在宅で就活が行えるようになったことによって,1日に複数の企業の面接を受けることが簡単になった.例えば午前中に東京の企業を受け,午後に名古屋の企業を受けるといった,平年であれば無茶なスケジュールを家から一歩も出ずにこなすことができる.地方の就活生として嵩む交通費におびえていたが,あまり多くを払わずに済んだ.在宅による就活は,決して悪いことだけでは無かった.在宅ワークへの移行が早いか遅いかということも我々就活生の知るところとなり,企業を選ぶ際の基準のいち要素になったというのは私だけではない筈である.

 自主的に休校を始める直前,既に就活を終えていた同期が利用したというエージェントサービスを紹介してもらい,登録していた.当てにしていた合同説明会が尽く中止になったため,企業との「偶然の出会い」が期待できず,それを補う術として頼ることにした.不安から2か所目のエージェントサービスにも登録し,エントリー先は2つ併せて10ヶ所になった.それより前に自分でエントリーした企業が10社あったから,トータルで私がエントリーした企業は20社になった.エージェントサービスは自分がやりたい仕事や興味がある分野のヒアリングを行った上で,求人の紹介とESや面接のアドバイスをしてくれる.「完成車メーカーは人気の業種だから推薦を使わないと受からない」と言われたときにはもう手遅れだったのだが,その他にも意義のあるアドバイスをいただくことができた.

 様々な業種,業界の企業を受け,私は結局そのうちの1社から内定を戴くことができた.業務内容は製造業向けのコンサルティングである.振り返ると就活生という立場で様々な職業の人たちと会話をするのはとても楽しかった.「信じられない」と思う方は多いかもしれないが,就活は楽しかった.この仕事は様々な異なる業種の方とコミュニケーションを図る仕事である.働き始めてもいろんな職業人の方の話を聞きたい.これが私が就活を行う中で見つけた「就活の軸」であり「自分が本当にやりたかったこと」だったのではないかと思う.やりたいことなんて日々変わっていくものだろうけど,自分の適性ややりたいことを分析し,進路を決めるのが幸せなのかもしれない.

 

2020年7月18日 記